大学院の同級生にT君という彫刻家がいました。デザインの世界から横滑りをして入ってきた僕には彼の彫刻に対する真面目さが新鮮でした。芯を持った空間のイメージとでも言えばよいのでしょうか。その芯が人体であり、その中にも芯があってそれぞれにディテールがあるということ。

僕はT君に石膏取りを、もう一人の同級生の陶芸家S君にろくろを習って当時の僕のテーマであったモザイクガラスの技法を研究しました。

その得難い経験の副産物のように土を主な素材として小さな彫刻を作り始めたのはそれから数年経ってからでしたが、今でも僕は二人に深い恩を感じています。そしてそのことを思い出す度に人生には決して返すことのできない借りというものがあり、そのことは悪いことではないなあ、と自分勝手に思うのです。